BABYMETALの読み方

OCEAN=オッシャンと呼ばれています。お察しの通りオッサンてす。BABYMETALについての個人的所感をボチボチ綴っていきます。

BABYMETALの2018年を振り返る⑥

【We are BABYMETAL】

第7章の欧米ツアーでは、ワンマンライブ10公演・ロックフェス4公演全てのオープニングとエンディングで、同じダークサイド・CHOSEN SEVEN仕様の紙芝居が上映された。

過去にもスター・ウォーズをパロッたオープニング映像をそのままロックフェスで登場時の演出に流用することはあった。けれど、終演時までワンマンと同じパターンが使われ、定番の「We are BABYMETAL!」のコールすらないまま、BGMと共にフェードアウトしていく演出は、一見の客が殆どのフェスでは甚だ不自然に見えた。

仮にユイメタルが復帰していた場合、ワンマンライブとフェスのフォーメーションやセットリストを変えることも可能だったろう。ひょっとしたらそのパターンも予定されていたかもしれない。

が、ツアー開始直前にユイメタルが欠場となってしまったとしたら、丸山・佃井の2人に演目を追加する余裕はなかったはずだ。2人はワールドツアー、ロックフェスともに初めてなのだから、リハーサルも出来ない一発勝負の海外フェスで、多くを望むのは無理がある。

これについては、その後の日本公演~シンガポール~豪州フェスまで、年間を通してセットリストがほぼ固定されていた点にも同じことが言えるだろう。


ただ、欧米ツアーとJAPNツアーからのエンディングには、一つだけ大きな違いがある。

ユイメタルの復帰を待ちながらの欧米ツアーでは、終演時の定番である「We are BABYMETAL!」のコールをワンマンライブですらやっていないのだ。これは東京ドーム初日の「to be continue....」同様、「まだ完結してないよ」という終わり方で、CHOSEN SEVENが姿を現すまでの途上であるという意味が一つ。

そして何より、ユイメタルを欠いた布陣では敢えてそれを封印するという、スーとモア、そしてチーム全員の意図があったのだと思う。前年12月の広島聖誕祭からそれは続いており、BIG FOX FESTIVAL大阪公演を最後に、彼女達は一度も「We are BABYMETAL!」と宣言してこなかった。


サポートダンサーを擁したダークサイド公演は、その時点で出来うる限りのステージを、KOBAMETALMIKIKO、製作・演出・デザインスタッフ、ツアークルー、7人の神バンド、マニピュレーター、5人のダンサーら、そこに関わる全員のプロフェッショナリズムを結集させて作り上げたものだ。

それは全て、ユイメタルの復帰を待つスーメタルとモアメタルの2人を全力で支える為のものだった。

それを受けて彼女達は、例えそれが外典~スピンオフであろうと、どんなスタイルに身を包もうとも、決してBABYMETALは死んでいない!という強いメッセージをステージに叩きつけてきた。


その想いは誰かが掲げたスマホの粗いファンカムからでも、痛いほど伝わってきたから、

衣装にも、メイクにも、フォーメーションにも、ちゃんとユイメタルを待つ運営サイドの気持ちが表れていたから、

ユイメタルがいなくなることなど、チームの誰も想定していない様子がはっきり見てとれたから、

自分はユイメタルの復帰を100%確信出来た。

どんな理由であれ、それは間違いなく、彼女自身がステージに戻ろうとする強い意思を持っている証だったから。

チーム全員が心ない批判をものともせず胸を張ってステージに立てるのは、そんなユイメタルの心情を知っている証だったから。


けれど「時として、予想もしないこと」が起こってしまった。ユイメタルがどんな思いでその決断に至ったのかは想像するしかない。

ただ、彼女は最後にこう綴っていた。

「私は恵まれているなと感じる日々でした」

その日、YouTubeに新曲『Starlight』がアップされた。

それが初めて演奏された幕張ライブで、万感の想いを込めて、彼女達は叫んだ。

「We are BABYMETAL!」と。

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【ダークサイドの行方】

欧米ツアーでのワンマンライブ10公演のセットリストは、以下の11曲だった。

1 IN THE NAME OF
Distortion
3 Elevator Girl
TATTOO
5 GJ!
6 紅月
7 メギツネ
8 ギミチョコ
9 KARATE
10 Road of Resistance
11 THE ONE(English ver,)

広島公演からのIN THE NAME OF(以下、ITNO)の他、3曲(Distortion、Elevator Girl、TATTOO)の新曲が加わったが、サポートダンサーにとっては全てが新曲であり、恐らく生バンドのメタル楽曲で踊るのも初体験だったろう。

米・独(×2)・英のロックフェス4公演では、ここからElevator Girl・GJ !・紅月・THE ONEを省いた7曲が演奏された。

暫定的な体制の中で、披露できる演目が限られてしまうのは仕方ない。2018年のライブは全てこれをベースにしたセトリで行われた。


注目すべきはオープニングのITNOである。インストゥメンタルの演奏に合わせて、マスク姿で杖を操る登場シーンは、広島公演からそのまま引き継がれたものだ。かつてオープニングの定番と言えばBABYMETAL DEATHだったが、ITNOはこれのダークサイド版である。フェスのオープニングとしては、やや間延びしてしまう演出だが、あくまでダークサイドにおける開演の儀式として、これは日本公演まで続けられた。逆に言えば「ダークサイドは広島から始まっていた」ということになる。

それは広島公演後に示された「次なる伝説」を予兆するデザインが、すでにDistortion~ダークサイドへと繋がっていたことからも明らかだ。

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2ndアルバム以降の4曲は明・暗で言うなら「暗」の印象が強く、歌詞もネガティブなワードを散りばめたシニカルな表現が目立つ。TATTOOの「やさぐれ感」などは、ちょっとこれまでのスーメタルにない色合いを出していると思うが、彼女のソロ曲は全て「暗」に寄っているものばかりだから特に違和感はない。

それより、Distortionの「怒り」や「憤り」、Elevator Girlの「堕落的」な表現は、これまでのBABYMETALには不釣り合いなほどのイメージチェンジだった。BMのイメージカラーである赤と黒のうち、黒に振り切った曲とも言える。

これまでにもそうした「黒い」フレーズがなかった訳ではない。BLACK BABYMETALの楽曲などは「真っ黒」なものもあるが(笑)、そこはユイモア2人のキャラクターとKAWAIII合いの手によって中和されていたし、その「相反するものの融合」「絶妙なバランスで構築されたアンバランス」こそが、初期のBABYMETAL最大の魅力だった。

やがて赤から黒へ、甘口から辛口へ、子供から大人へ....既存のファンが望むものと相容れるかどうかは別として、1st~2ndアルバムの間に見せた変化同様、BABYMETALは常に進化・成長をし続けるユニットであり、その歩みは止まるものではない。

例えばコスチュームデザイン一つとっても、2ndアルバムのリリースを挟む2015~2017年の3年間で、赤いカラーと肌の露出は段階的に消えていき、トレードマークだった赤いチュチュは黒ずくめのアーマードレスに様変わりしていった。

そして広島聖誕祭においては、現在のスタイルに通じる原型がよりはっきりと表れ、神バンドのコスチュームまでが白から黒へと変化した。そのエンディングで、スーメタルとモアメタルの2人は天空へと続く階段を上り、オーディエンスに背を向けたまま消えていったのだ。

この演出はスーメタルの二十歳を契機に、一気にスタイルチェンジを図る為の序章だったろうし、藤岡の死やユイメタルの脱退を前提にしていなかったことは言うまでもない。

つまり、現在のスタイル自体は当初からの規定路線であり、CHOSEN SEVENというのも、第3章のトリロジーや第5章の5大キツネ祭り同様、第7章の数字にかけただけのものだったはずだ。

ところが、直後に起こった藤岡の死によって、ダークサイドには「喪に服す」という意味合いが込められることになった。

そこへユイメタルの長期欠場という二重の苦しみがのしかかり、日蝕によって光が失われたロゴマークは、計らずも2つの意味合いを持つことになった。それまでメイトを感動させてきた「フィクションとリアルの奇跡的な同時進行」が、ここでも不気味に符合してしまったのだ。

「KOBAは広島以前からBMを辞めたがっていたユイメタルを無理に留めおき、ダークサイドの途中で彼女が抜けることは全て初めから計算づくだった」とする的外れな妄想は、未だにくすぶっている。

それは少なくとも5月以降の流れの中で、最悪のケースとして想定せざるを得なかっただろうし、日本公演までに水面下で準備されてきたCHOSEN SEVENには、その為の「保険」として没個性メイクが加えられたことは確かだろう。

しかし、本当に彼女がステージに立てる状態で脱退を希望していたのであれば、KOBAは確実にユイメタルがFOX GODによって召還(召喚ではなく)される演出による引退ライブを用意したはずである。が、「何度も考え直した」彼女の「もう一度ステージに立ちたいという強い思い」は叶わないまま、「予想もしなかった」最悪の結末を迎えしまったのである。


そして、脱退発表と同時にリリースされたStarlightも、藤岡へのレクイエムとして作られたはずが、やはり二重の意味合いを持つことになった。

その日本公演も欧米ツアーでのセットリストをベースに、TATTOOをStarlightに置き換えた11曲で構成された。JAPNツアーでユイメタルが復帰していれば、この曲で藤岡への追悼を捧げることで「喪が明ける」はずだったのだ。

バックコーラスの歌詞の
We’ll never forget shining starlightと、
We’ll never forget shooting starの部分で、shinig starlight=「輝き続ける星空」をユイメタル、shooting star=「輝きを放ち消え行く星」を藤岡へ向けたものと読むメイトも多いが、或いはリリース直前で差し替えられたのかも知れない。

いずれにせよ、JAPNツアーは2人への惜別の想いを歌い上げるとともに、新たな展開へと飛び立つ起点となった。


その後、「予想もしなかった」事態を受けて、光と闇が重なりあった状態。それが12月のシンガポール~オーストラリアで見せた3人体制だ。

日本公演ではユイメタルの復帰を想定しての濃いアイメイクが施されてはいたかが、5人のサポートダンサーには縦のラインを入れてスーモアの2人との差別化を図っていた。

けれど、オリジナルメンバーを没個性にする必要がなくなったシンガポールからは、2人のアイメイクは薄くなり、サポートの平井だけは日本公演と同じ縦のラインが入っていた。

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セットリストからはダークサイドの儀式であるITNOがなくなり、

1 メギツネ
2 ギミチョコ
3 Elevator Girl
4 メタ太郎
Distortion
6 KARATE
7 Road of Resistance

の7曲で統一された。

新曲のStarlightは含まれていない。この曲に込められた想いはやはり特別なものであり、日本でその「決別の儀式」を経たBMは、すでに飛び立ったのだ。さらにサバトン、Garactic empireとのコラボの為にSSAのみで加えられたメタ太郎を入れることで、ダークサイドに明るさをもたらした。けれどバックドロップやRORでの旗は日蝕ロゴのままである。

つまり、依然としてダークサイドは続いているものの、光と闇が重なった状態から次第にそれが明けつつある段階....と言っていいのかも知れない。



この先、ダークサイドが一気に明けて、元のスタイル....赤いチュチュにポニーテールとツインテールに戻る....という可能性は低いと思う。広島公演のエンディングで2人が祭壇を上っていったあの時から、BABYMETALは完全に「次のステップ」へ旅立ったのだ。喪に服していたダークサイドの間に、予想外にあまりにも大きなピースを失ってしまったが、それでもこのチームに後戻りという選択肢はない。

それが一体どんなものになるのかは、誰にも分からない。もしかしたら、KOBAMETALでさえ白紙の状態から練り直しを迫られているかも知れない。

だが、4人体制で臨んだ欧米ロックフェス同様、新たな3人体制で初上陸した豪州フェスでも、彼ら(彼女ら)はまるでホームグランドのように会場を熱狂の渦へ巻き込んで見せた。

そして高らかに「We are BABYMETAL!」とコールした後のエンディングは、やはりBGMとともに静かに去っていった。  

ダークサイドは続くのか?終わったのか?

どこにも第7章のファイナルを謳う文字はなく、明年以降の告知もまだない。一部では、すでに来年の米フェスへの出演や3rdアルバムリリースのフライング情報が出回っているが、真偽は不明だ。



今年の漢字は「災」だそうだが、まさにBABYMETALにとっても同じだった。

片翼を失い、片足をもがれ、それでもキツネは飛べるだろうか?

絶望さえも光に変えて、涙こぼれても立ち向かい、ひたすらセイヤソイヤと歌い躍り、これまでのようにメイトの度肝を抜いてくれるのだろうか?

我々が「ベビメタロス」と呼んでいる、全く何の情報も出てこない期間こそ、実はツアー中の何倍もKOBAMETAL達はフル回転で動いているはずである。

その行く末を、小神もユイメタルも見守っているに違いない。だからこそ、妥協など出来る訳がない。またもや想像の斜め上を行くブッ飛んだ展開を、ひたすら期待するのみである。


間もなく災いに明け暮れた2018年も終わり、そして次のFOX DAYには平成も終わる。

どうかBABYMETALと水野由結にとって、新しい年が更なる飛躍の年となりますように。

心からお祈り申し上げます。


(※この章終わり)